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2006年8月
信仰のルーツ
ファム・ディン・ソン神父

今年で司祭に叙階されて12年たちますが、2年前の司祭叙階10周年のお祝いに生まれて初めて父母が生まれ育った故郷に行くことが出来ました。
 このベトナムの旅は私にとって特別なものでした。それは、人生で初めて、両親と一緒に故郷に帰ったからです。また、私が司祭に叙階されてから10年を迎えて、自分の国で、公の場で初のミサを捧げました。(ベトナムには色々な事情があるからです。)また、この旅のもう一つの喜びはサイゴン大司教教区で司牧している叔父 (母の弟)と一緒にミサを捧げられることです。
 半年以上前から準備にかかりました。しかし準備とは言っても、遠くに居る私は全部のことを両親に任せていました。 ただ、一つ言われたことは、「手ぶらで帰れませんよ」「王様が村に帰るからね…」。「王様」になったことはないので、想像もしていませんでしたが、田舎の方は色々なしきたりがあることを知っていましたから、手土産だけは準備しました。
 2004年6月29日、夜9時にノイバイ空港(ハノイ)に到着しました。母や家族は一足早くハノイに着き私の到着を待っていました。 一週間前に、色々な段取りのために現地入りしていた父も出迎えに来ました。 ハノイから南へ150キロ(車で約4時間)の所に父母の生まれ故郷があり、ここには司教座聖堂であるPhatDiem(ファット・ジィエム)教会があります。母はこの教会をよく第二のバチカンと呼んでいました。というのはこの教会は大勢の人たちが山から石を運んで教会を建てたものだそうです。人々の強い信仰によるものだと、小さい時からよく母に聞かされていました。
  私の父母の出身教会はいずれも巡回教会です。ここの小教区には10以上の巡回教会があります。巡回とはいっても、父の教会は4800人の信徒がいるそうです。日本では高松や大分教区の信徒数ぐらいです。では小教区の信徒数は何千人なのでしょうか。
 6月30日朝、いよいよ「王様が出陣」。もの凄く緊張しました。「王様」は指揮官に言われた通りに、ただ後に付いて進むだけでした。
 おまけにその日は特に暑く、気温が39度以上もあったそうです。予定外のことがおこり、一時間も遅れて父の出身教会に着きました。車を降りた瞬間「王様が村に帰る」ことを実感しました。こんな暑い中で、しかも一時間も遅れてきているのに、沢山の人々が行列の準備に外で待っていてくれました。「着きました」という知らせを聞いて、聖堂から外へ殺到。一目「王様」をみたいのでしょうか。あまりのことに、私は顔を上げて歩くことが出来ませんでした。「王様」なら顔を上げて堂々とすればいいはずですが、ただ「大変遅れて申し訳ありません。」「ごめんなさい」という気持ちでいっぱいでした。「王様」は辛かった。
 このときのベトナムの旅はわずか5日間でしたが私にとって大変有意義な旅でした。司祭叙階から10年が過ぎ、これから新たにしていく司祭職に貴重なものを蓄えたように思います。
 故郷とはいうものの、私自身が生まれ育ったところではなく、両親が生まれ育ったところなのです。第二次世界大戦後、フランスの植民地から逃れ独立を取り戻したいとする、多くのベトナム国民の期待も空しく、1954年のジュネーブの会議において、ベトナムは17度線を南と北とに分けられました。北は共産主義に、南は民主主義にと二つの国となりました。共産主義は嫌で、また無神論をうたっている北に対して沢山の人々が故郷を後にして南の方へ移住しました。その中には90万人以上のカトリック信者がいました。私の両親もその中にいました。
 小さいときからよく父母に故郷の話を聞かされていました。分断された故国、 家族とも音信不通で何十年にも渡って戦争し、殺し合ってきました。母はよくため息まじりに北の教会のこと、逃げ遅れた友達や親戚のことを心配していました。もう一生帰れないのかと涙するときもありました。
 「故郷」を離れる朝、父は兄、弟そして私を連れて祖父のお墓参りをしました。祖父のお墓の前で父は「お父さん、今日は50年にしてやっと子供たちを連れてきました。」と泣きながら報告しました。祖父の顔を見たことはありませんが、「お祖父ちゃん、はじめまして….」と突然目が痛くなって、涙がぼろぼろと落ち始めました。
  私のルーツはここからはじまったのだなと改めて実感しました。

 



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